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身近でできる安全・安心有機栽培の基礎知識(4)

身近でできる安全・安心有機栽培の基礎知識・第四回目は、「有機栽培で使用可能な肥料」についてお送り致します。

有機肥料として販売されているものにも有機認証制度では使用できないものがあるのを知っていますか?
今回は有機認証制度下で使用可能な資材について説明します。

有機農作物の原則

有機農産物のJAS規格には、有機農産物の生産の原則が以下のように規定されています。

  • 目的
    農業の自然循環機能の維持増進を図ること
  • そのための方法論1
    「化学的に合成された肥料(※1)や農薬を避けることを基本とする」
  • そのための方法論2
    「土壌の性質に由来する農地の生産性を発揮させる」
  • そのための方法論3
    「農業生産に由来する環境への負担をできる限り低減した栽培管理方法を採用する」

有機栽培でのチッ素分の補給


農業生産活動は、自然界の生物の食物連鎖やチッ素循環によって、昔から自然と共生しながら営まれてきました。
植物は自ら有機化合物を合成します。つまり食物連鎖のスタートといえます。
それをえさにする昆虫やそれを捕食する小動物、次に肉食動物、これらの死骸を食べる土壌生物や微生物。
このような生物の多様性の中で、ある生物のエネルギーがほかの生物に利用され、生物に欠かせない元素が繰り返し利用されている物質循環がベースになっているのです。
 
植物の生育に必要なチッ素分を例に考えてみましょう。
植物は生育に必要なチッ素分を主に土壌中から吸収します。そのチッ素分は収穫物残渣や土壌微生物、地上動物、大気などの物質循環によってもたらされています。
植物が利用したチッ素分の大部分は、収穫物として農地の外に持ち出されます。この状態を放置するとチッ素分の収支が合わなくなるため、チッ素肥料を補給しないと十分な植物の生育が困難となってしまいます。
 
ただし有機栽培では化学肥料は使用できませんから、収穫物残渣などを堆肥化して投入したり、輪作体系を考えたり、緑肥やマメ科植物を利用したりして土壌の肥沃化に努めています。
しかしこれらの方法だけでは養分供給が不十分な場合があるため、その補助資材として、有機栽培でも使用可能な肥料や土壌改良資材が市販されています。

有機栽培で使用可能な肥料とは


有機栽培で使用可能な肥料や土壌改良資材の考え方は、

  • 使用目的が、肥料目的、土壌改良目的であること
  • 天然物質または天然物質に由来する原料であること
  • 化学的な方法によらずに製造されたものであること
  • 肥料製造において化学的に合成された物資が添加されていないこと

1~4のすべてを満たす肥料や土壌改良資材のみが基本的に使用可能な資材です。

肥料については肥料の公定規格や登録、検査などについて定めた肥料取締法(※2)という法律があります。その中には「有機肥料」の公定規格はありません。近いものには「有機質肥料」や「有機入り配合肥料」の規格があります。
 
「有機質肥料」には、魚かす、骨粉、乾血・血粉などの動物質肥料、なたね油かす、ダイズ油かすなどの植物質肥料やぼかし肥料その他有機廃棄物肥料がありますが、すべてがすべて有機栽培で可能という訳ではありません。先の④による確認が必要になりますが、おおむね使用可能な物が数多くあります。
 
注意を要するのは、動物質肥料の蒸製皮革粉(※3)で、原料がタンニンやクロムによってなめし処理されている関係で、使用禁止資材になっています。
 
「有機入り配合肥料」とは配合肥料の製造において有機質肥料を一定量以上配合した物をいい、すべてが有機許容原料とは限りません。化学肥料が配合されているものもありますし、先の蒸製皮革粉が原料に使用されていることもあり、配合原料の個々の確認が必要になります。また配合肥料には、まきやすくするために粒状化去れたものが多数ありますが、原料に鉱物類が多くなると化学合成由来の造粒剤が使用されていて使用禁止になっているものもあります。
 

では有機栽培農家が使用している肥料は?


有機栽培農家が使用している肥料は、たい肥、有機入り配合肥料(有機許容原料100%使用)、ぼかし肥、魚かす、油かす類、米ぬか、炭酸カルシウム肥料、貝化石肥料などが一般的で、植物質由来、動物質由来、鉱物質由来を組み合わせて利用するケースが多くみられます。
魚かすなどの動物質有機肥料は微生物分解によりアミノ酸態となり、食味向上に効果を発揮しますが、ほ場の土の上に直接散布したままにしておくと虫が集まりやすくなるため、必ず土壌中にすき込むようにしてください。


■注記

※1 肥料(ひりょう)
植物の栄養に供すること又は植物の栽培に資するため土壌に化学的変化をもたらすことを目的として土壌に施される物、および植物の栄養に供することを目的として植物に施される物

※2 肥料取締法(ひりょうとりしまりほう)
肥料の保証成分不足や異物混入といったごまかしなどの不正流通防止を目的とした法律

※3 蒸製皮革粉(じょうせいひかくふん)
なめし革などの皮くずを蒸熱後乾燥、粉砕したもの

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