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身近でできる安全・安心有機栽培の基礎知識(2)

身近でできる安全・安心有機栽培の基礎知識・第二回目は、「作付け計画の考え方」についてお送り致します。
あなたの畑では自分で収穫して食べたい野菜のみ作付けしていませんか?
おいしい野菜を収穫するには、年間を通して、いつ、どの野菜を植えるかという作付け計画をきちんと考える必要があります。

連作障害の原因


畑に同じ作物を作り続けると、作物の生育、収量、品質が低下する連作障害(いや地)が発生します。
その原因は、土壌養分の消耗によってアンバランスになった過剰の養分残留や微量要素の欠乏であったり、作物自身が分泌する有害物質の蓄積であったり、土壌伝染性の病害や線虫(※1)などによるものなど、さまざまな原因があげられます。
その対策として太陽熱や熱水の注入による土壌消毒や、有用微生物が豊富な堆肥や微生物資材を使うことによって、連作障害を回避している事例も見受けられます。

連作障害を防ぐ目安


休む期間連作障害がでやすいといわれている作物
約5〜7年エンドウ、ゴボウ、スイカ、トウガラシ、トマト、ナス、ピーマン、メロン
約3〜4年サトイモ、ソラマメ、大豆、ナガイモ
約2年イチゴ、インゲン、キュウリ、ジャガイモ、ニラ、ハクサイ、レタス
約1年オクラ、キャベツ、コカブ、ネギ、ホウレンソウ

輪作の導入


有機栽培では、連作障害が発生しないように、同じ作物、または同じ科の作物を続けて作付けせず、違う科の作物を作付けする「輪作」という方法をとります。

輪作の計画は、地力の維持増進、土壌の物理性の改善、土壌養分の維持補給、雑草の抑制、土地の効率的活用などの観点からも検討しなければいけません。
一般的な輪作のパターンは、最初に養分要求が強いホウレンソウ、ジャガイモ、キャベツ、トマト、ウリ類、穀類を作付けします。
次にニンジン、カブ、タマネギ、ニンニクなどの根菜類や鱗茎類を作付けします。その後にインゲン、エンドウ、ソラマメなどマメ科を作付けします。
また、良質な有機物が入手できず、地力が弱い場合は、輪作の中に緑肥(※2)としてイタリアングラス、ソルゴー、エンバク、クローバー、レンゲなどの地力増進作物を栽培し、青刈り(※3)すき込みによって畑の腐植(※4)を増加させます。
同じ科の作物の連作は作物につく害虫も共通することが多く、害虫の発生密度が高くなり被害も受けやすくなるため、防虫対策の点でも輪作は有効な手法です。

科ごとの代表的な作物



アカザ科ホウレンソウ
アブラナ科カブ、カリフラワー、キャベツ、コマツナ、ダイコン、チンゲンサイ、ハクサイ、ブロッコリー
イネ科トウモロコシ
ウリ科カボチャ、キュウリ、スイカ、メロン
キク科ゴボウ、シュンギク、レタス
サトイモ科サトイモ
ショウガ科ショウガ
セリ科セロリ、ニンジン、パセリ、ミツバ
タデ科ソバ
アオイ科オクラ
ナス科ジャガイモ、トウガラシ、トマト、ナス、ピーマン
ヒルガオ科サツマイモ
マメ科インゲン、エダマメ、エンドウ
ユリ科タマネギ、ニラ、ニンニク、ネギ、ラッキョウ、ワケギ

同じ科の作物を続けて作らないよう、作りたい作物がどの科に属しているかを知っておくことが重要です。

前作との相性


下の組み合わせは、相性が悪く生産性が低下する傾向があり、注意が必要なものです。

前作その後に作ると相性が悪い作物
エンドウホウレンソウ
キュウリニンジン
サツマイモカブ
ジャガイモエンドウ・ショウガ
セロリ・ナス・ハクサイサツマイモ・ダイコン
ダイコンピーマン
ソバカブ
ナストマト・ジャガイモ・ピーマン(同じナス科)

混植・混作の活用


チッ素供給源であるマメ科植物や、土壌の有害生物の忌避効果のあるニラなどから、2種類以上の作物を一緒に栽培することを混植・混作といいます。家庭菜園では非常に有効な手法です。
ニンジンとエンドウ、ホウレンソウとエンドウ、トウモロコシとカボチャ、メロンとヒマワリなど、組み合わせはさまざまです。その効果として、以下のものがあげられます。
 
  • 病害虫忌避効果・・・タマネギはイチゴやトマトを、ミントはキャベツを、バジルはトマトを、トマトはキャベツやブロッコリーを虫から守るといわれている。
  • 土壌養分の効率効用・・・浅根性と深根性の作物や、養分要求の強い作物と弱い作物の混作により、養分が効率よく利用できる。
  • 誘引効果・・・草丈の高い作物と低い作物、おとり作物によって虫を誘い集める。
  • 天敵定着効果(※5)・・・多種多品目の栽培によって益虫が生息しやすい環境になる。

作付け計画の考え方


以上のような作物のさまざまな組み合わせや時期的なことを踏まえ、畑内のローテーションを検討します。
それとともに忘れてはならないのは、その畑の気候、風土、土質、水質などの環境に適した作物や品種を選定することです。
有機栽培への転換を始めるときによく行われるのは、多品種・多品目の栽培から、その畑や環境に適した品種を絞り込んで行くことです。皆さんは、無理のある品種選びをしていませんか?


■注記

※1 線虫(せんちゅう)
線虫綱の袋形動物の総称。体は細長く、断面は円形。体表は平滑で厚い角皮で覆われる。多くは動植物に寄生し、回虫・鉤虫(こうちゅう)・住血糸状虫など人畜に害を与えるものも多い。円虫類。ネマトーダ

※2 緑肥(りょくひ)
マメ科作物(根粒菌を増やす)や、イネ科などの根が深い作物(土の中の通気性や水はけをよくする)などの葉や茎を生のまま切り刻むなどして田畑にすき込むこと

※3 青狩り(あおがり)
飼料または肥料にするために、葉がまだ青く実が熟さないうちに刈り取ること

※4 腐植(ふしょく)
土壌中の動植物の遺体が微生物の働きで分解された有機物。一般には土壌中の有機物の総称

※5 天敵定着効果(てんてきていちゃくこうか)
くも、かまきり、とかげ、てんとう虫など、植物を食害する害虫を食べてくれる益虫(えきちゅう)が生息しやすい環境になること




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