3.農業だからこそ出来ること
では、農業従事者として地球温暖化とどのように向き合っていけば良いのでしょうか。
温暖化を食い止め、環境保全を重視する農業
緑豊かな里山を背景に、山で蓄えられた水が川となって海に向かって流れ、その流れを地形や気候風土に合わせて巧みに取り入れた田畑が広がる…このような日本の土地利用のあり方は、そのまま温暖化対策の一つともなります。
森や林の草木は、二酸化炭素を吸収してくれます。水田からの蒸発散は、光や熱を吸収し、気温を下げる働きがあります。周辺に農地があることで、都市の気温上昇を防いでくれています。また環境に配慮した農地があることで、メダカやトンボ、渡り鳥などの貴重な生育域も守られています。
これらを考えると、農業は地域の気候を安定させるだけでなく、環境面で多面的に役立っていることがよくわかります。
全国の水田が蓄えることができる水は約52億トン、東京ドームのおよそ4200個分もあります。水田は地域の水がめとなると同時に、土壌浸食・流出をも防ぎます。
水田の保水機能を守ることが地球温暖化解決の鍵の一つになります。
「地産地消」を推し進めてエネルギー消費を抑える
地産地消とは、遠くからエネルギー(石油)を使って運んでくるのでなく地元でとれた旬のおいしい生産物を地元で消費しよう、という働きです。
私たちの食卓に食べ物が届くまでに、どれだけの輸送エネルギーが使われているかを算出する指標「フードマイレージ」を比べてみると、日本はアメリカの3倍以上のエネルギーを使って食品を入手していることになります。地産地消を推進することは、地場流通を増やして地域を活性化できるうえに、流通にエネルギーを使わない分、温暖化防止に役立ちます。
バイオマス活用でエネルギー循環を
地球温暖化防止に貢献し、地域の生物資源を有効利用するバイオマス活用が、21世紀の環境調和型技術として注目されています。バイオマス活用は、大量生産・大量消費・大量廃棄といった今までの私たちの暮らしを、地球に過度な負担を与えない、循環型社会への変えていく大きな道筋につながっています。
日本の農業の持つ力を再び!
世界の食料事情は、人口増加や土壌劣化などの影響に加えて、地球温暖化の影響でさらにひっ迫することが予想されます。したがって日本の農業を守り、森林と水・土壌を保全し、耕地面積と耕地利用率を高め、農業生産を増大させていくことが極めて重要です。
日本の農業がこれまで培ってきた「気候にうまく順応する知恵」を結集するとともに、地球温暖化に対応するための調査研究、農業技術の向上・改良を推し進め、積極的に地球温暖化防止にチャレンジしていく。日本の農業は、地球温暖化によって影響を受ける受け身の存在なのではなく、温暖化を乗り越えるための切り札となる大切な産業です。
- このページは農家及び農業従事者向けのパンフレット 「どうなる どうする!? 地球温暖化−農家だからこそできること−」を元に作成致しました。
- 図表は全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイトからの出典です。
CO2濃度計
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