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身近でできる安全・安心有機栽培の基礎知識(5)

身近でできる安全・安心有機栽培の基礎知識は、今回から「有害動植物の防除」について3回にわけてお送り致します。

有機栽培では基本的に農薬は使用できません。伝統的な栽培技術を復活させたり、物理的な方法を用いたり、生物の多様性を豊かにしその均衡状態を保つなどして被害を軽減します。
具体的にはどのようなテクニックがあるのでしょうか?今回は農薬の定義から農薬でないものを整理しました。

有機栽培の始まり


有機栽培の歴史は、1962年のレイチェル・カーソンの『沈黙の春』の出版に始まるといわれています。
 
第二次世界大戦後、先進国の目覚しい高度成長に伴い開発された、便利な農薬などの人体や自然への悪影響を啓蒙した書籍です。当時の農薬はある意味で農薬ではなく農毒だったのかもしれません。
日本においては有吉佐和子の『複合汚染』が有名です。その後の農薬は、安全性に対する評価が厳格化され、より安全で残留毒性の少ない物が製剤化されて来ています。

農薬の種類


毒性や危険性の観点から順に農薬を整理すると、農薬登録が必要な特定毒物、毒物、劇物、普通物、農薬登録が不要な特定農薬(特定防除資材)の順になります。
 
特定農薬とは平成15年の農薬取締法の改正時に新設された概念で、病気予防に使用する食酢や重曹のように、その原材料から明らかに農作物や人畜、水産動植物に害を及ぼす恐れがないことが明確なもので、防除効果があるものをいいます。驚かれるかもしれませんが、この食酢や重曹も農薬に該当します。

農薬に該当しない有害動植物の防除に使用可能なものは?


  1. 副次的に効果がある肥料に該当するもの
    カリ肥料(つや出し、糖度、品質向上)、ケイ酸カリウム(耐病性などの向上、品質向上)ケイ酸石灰(イネの耐病性などの向上)、ケイ酸マグネシウム(果樹の落果防止や樹勢回復)、硝酸カルシウムや硫酸カルシウム(倒伏軽減、生理障害の防止)、ポリリン酸カルシウム(果樹の着花促進や品質向上)、塩化カルシウム(トマトのカルシウム欠乏により尻腐れ症の防止)、硫酸マグネシウム(マグネシウム欠乏症の防止)、ホウ酸入りカルシウム(生理障害の防止)、EDTA-4Hのカルシウム塩(カルシウム欠乏および果樹の浮き皮防止)などのように肥料に該当するもので、副次的に病害虫への抵抗性を高めたり、成長を促進する効果があるが、農薬的効果と断言するには困難なものが該当します。

    ただし、有機栽培で使用可能なものは、
    1. 原料が天然物質由来で、
    2. その製造方法が化学合成によって作られていないもの、
    3. また化学合成物質が添加されていないもの
    のみです。

  2. 物理的防除方法に利用する資材
    消毒に利用する水蒸気、熱湯、温風、地中加湿、太陽熱消毒、害虫飛来防止に利用するUVカットフィルム、紫外線反射フィルム、昆虫行動制御灯(黄色蛍光灯)、誘蛾灯、電撃殺虫剤、反射マルチ、電灯、発光ダイオードなどによる照明、紫外線投光器、雑草対策に利用する紙(紙マルチ)(薬剤含浸物を除く)、抗菌マルチ(銀使用)、多目的防災網、防虫網、寒冷紗(薬剤含浸物を除く)、粘着板・粘着シート(薬剤含浸物を除く)、樹幹へのわら巻き(わらに害虫を集め焼却)、爆音器などのように物理的な性質を利用して防除する方法で、薬剤でないものが該当します。

  3. 耕種的防除方法で利用される農法や植物
    害虫の天敵である昆虫である昆虫が好む植物を植えることにより、ほ場の在来天敵を増やし、害虫を低密度に保ったり、ほ場にくず米をまいてスズメを呼び寄せ、ついでに害虫を食べさせたり、また、土壌線虫対策にギニアグラス(イネ科)、クロタラリア(マメ科)、イタリアングラス(イネ科)、エンバク(イネ科)、ソルゴー(イネ科)、マリーゴールド(キク科)、落花生(マメ科)などを、輪作や混植や間作したりするなど、耕種的な防除方法で使用する植物が該当します。

  4. 昆虫類でない捕食動物
    農薬取締法上の天敵類には該当しないアイガモ、アヒル、スズメ、カエル、牛、ヤギ、羊、コイ、フナ、ドジョウ、ホウネンエビなど雑草や害虫を捕食する動物が該当します。
  5. 農薬の定義

    農薬取締法では、樹木及び農林産物を含む農作物などを害する動植物または病害虫の防除に用いられる殺菌剤、殺虫剤その他の薬剤や、農作物などの生理機能の増進または抑制に用いられる生長促進剤、発芽抑制剤やその他の薬剤を農薬と定めています。また、生産者が自分で作る防除資材、植物ホルモン剤、わい化剤、防除のために利用される天敵もすべて農薬に該当します。
    特定防除資材指定の基本的考え方

    1. 薬の定義に該当するもの
    2. 化学合成された物質でないもの(但し食品を除く)
    3. 抗生物質でないもの(弱毒ウィルスを除く)
    4. 有効成分以外の成分として化学合成された、界面活性剤などの補助成分が入っていないもの
    5. 病害虫や雑草に対する防除効果、植物等の生理機能の増進や抑制に対する効果が確認できるもの
    6. 農作物等、人畜や水産動植物への安全性が確認できるもの
    農薬使用基準の遵守

    農薬使用に当たっては農薬使用基準があり、一般家庭園芸ユーザーも含めすべての農薬使用者は農薬使用基準に準拠した使用をしなければならないことになっています(罰則対象)。

    1. 農薬使用者の義務
      1. 農産物等に害を及ぼさないようにすること
      2. 人畜に危険を及ぼさないようにすること
      3. 農産物等に汚染が生じその汚染による農産物等の利用が原因となって人畜に被害が生じないようにすること
      4. 農地等の土壌の汚染が生じその汚染により汚染された農産物等の利用が原因となって人畜に被害が生じないようにすること
      5. 水産動植物の被害が発生しその被害が著しいものとならないようにすること
      6. 公共用水域の水質の汚染が生じその汚染による水の利用が原因となって人畜に被害が生じないようにすること

    2. その為の具体的遵守事項
      1. 規定された適用農作物以外の食用農作物に使用しないこと
      2. 規定された単位面積当たりの使用量を超えて使用しないこと
      3. 規定された希釈倍率の最低限度を下回る(濃い)希釈倍率で使用しないこと
      4. 規定された使用時期以外の時期に散布しないこと
      5. 播種から収穫までの間に規定された使用回数を超えて使用しないこと

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