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有機栽培の基礎知識
有機栽培の基礎知識:7
2009年01月29日

前回はIPMハンドリング(総合的有害動植物防除管理)の概要を紹介しました。
大切な作物を食害する害虫、これを退治してくれるのが天敵です。天敵利用には市販の農薬登録された天敵を利用する方法と、その土地や地域に自然に土着している天敵を利用する方法とがあります。ここでは家庭菜園でも利用できる身近な土着天敵を利用して害虫を抑える方法について紹介します。

食物連鎖が途切れない環境作り

害虫が作物を食べ、その害虫を天敵が食べ、その天敵をまた違う天敵が食べるといった関係を「食物連鎖」といいます。食物連鎖は複雑な網目状になっており、一言で片付けることができない自然の営みの世界です。
有機農業では「生物の多様性」を尊重し、食物連鎖による害虫と益虫の均衡の取れたバランス作りによって病害虫対策を考えます。ある意味、野放図な放任栽培に見えるほ場であっても、自然の摂理にかなった計画的な多種多様な作物が植えられた場は、収穫に多大な影響が出るほどの被害は発生しないのです。有機認定の検査で長年有機栽培を実践されているベテランの有機農家に、有機栽培への転換の動機やその過程での苦労話をお伺いする機会がありますが、皆さん口をそろえておっしゃるには、「農薬の使用を中止すると初年度は必ず病気と虫によって多大な被害を受け出荷がほとんどできない。一緒にスタートした仲間はその過程で我慢できなくなって、やっぱり有機栽培は無理だとあきらめて農薬を散布してしまう。でも農薬によって遮断されていた食物連鎖が回り始めると、翌年は初年度ほど被害は出ない。年を経るごとに土もできてきて、作物のできもよくなり病害虫の被害に困ることはなくなる」と。
「自然との共生が」大切なんですね。

代表的で身近な土着天敵

最も大きく身近な天敵は、小鳥(シジュウカラ、ムクドリ、モズ、スズメ、オナガ、ヒヨドリなど)です。さつまいも畑のヨトウムシ対策、雑草対策にニワトリを10a当たり5羽放し飼いにし、効果をあげている例もあります。ニワトリはイモの葉が嫌いなようです。カエルは益虫も害虫も捕食します。トカゲは畑の中に住むヨトウムシ、ネキリムシ、カタツムリ、ナメクジを捕食します。カマキリ(オオカマキリ、ウスバカマキリ、ハラビロカマキリ)は蛾や蝶など生きた虫を捕食します。クモ(土用鬼グモ、赤胸グモ、足長グモ、子守グモ、地グモ)は巣を張ったりして捕獲して害虫を食べてくれます。あなたの畑でこれらの小動物を見つけることができますか?特にカマキリは有能な天敵で4月下旬から5月にかけてふ化し、大きな成虫は9~11月にかけて見つかります。生きた虫なら何でも食べてくれます。カマキリを見つけたら捕獲して畑に放しましょう。

害虫と益虫

虫にも害虫と益虫と無害な虫とがあります。すべての虫が害虫というわけではありません。害虫には、ノミの仲間、シラミの仲間、ハエの仲間、蚊の仲間、蝶の仲間、蛾の仲間、バッタの仲間、カメムシの仲間、セミの仲間(カイガラムシ)などが、益虫には、ウスバカゲロウの仲間、トンボの仲間、ハチの仲間、テントウムシの仲間、クモの仲間などが、無害なただの虫には、ケラ、キリギリスの仲間、トビケラ、カブトムシの仲間、ホタルの仲間、アリの仲間、ダンゴムシなどです。有機認定の検査の現場では、畑にこれらの虫がいるかいないかも農薬を使用していない根拠として現地確認します。

土着天敵を誘導するバンカープランツ(天敵養生植物)

天敵を有効活用するには、天敵が好む環境を畑の近くに作ってやる必要があります。近くに自然が残っていないコンクリートジャングルの中の畑では、作物は害虫の餌食になりやすくなります。周りの自然と隔絶しないようにして天敵を誘導する植物(バンカープランツ)を周辺に作付け、畑に土着天敵が飛来しやすい環境を作る必要があります。
 ソルゴーやムギ(植物に害を及ぼさないアブラムシを寄せて、その天敵である寄生昆虫のアブラバチを増やす)、クローバー(キャベツの周りにクローバーを植え、クローバーにアブラムシやアザミウマなどの害虫が発生、キャベツには害虫がつかず、クローバーについた害虫を天敵が捕食し、ついでにキャベツについた害虫も捕食してくれる)、ヨモギを植え効果をあげている事例があります。バンカープランツに害虫がつき、その害虫に誘引されて天敵が集まります。その集まった天敵に畑の作物の害虫も退治してもらうおとり作物です。また忌避植物であるマリーゴールド、ナスタチューム、チャイブ、ミントなどのハーブ類をバンカープランツの内側に作付けし、バンカープランツに害虫を集め、収穫対象の作物を守る方法もあります。

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2008年09月25日

前回は農薬の定義から農薬でないものを整理しました。有機農産物のJAS規格では、有害動植物の防除は、IPMハンドリング(総合的有害動植物防除管理)によって行うこととなっています。
今回はその手法についてお話しします。

IPMハンドリングとは?

有機栽培の有害動植物の防除方法は、基本的に農薬は使用しません。

  • 耕種的防除(通常行っている栽培内容を変更することにより防除する方法)
  • 物理的防除(物理的な性質を利用して防除する方法)
  • 生物的防除(生物同士の相互作用を利用して防除する方法)
これらの組み合わせによって行う防除方法を、IPMハンドリング(総合的有害動植物防除管理)と言います。

その具体的な防除対策とは?

  1. 土作りを兼ねた防除対策
    • 輪作の導入や混植、間作の導入
    • 3~4年の周期で水田と畑地の状態を入れ替える田畑転換による土壌病害と雑草の抑制
    • 灌漑、耕起、中耕(※1)、天地返しによる土壌病害や雑草の抑制
    • 土壌の太陽熱または蒸気利用による土壌消毒
    • 土壌微生物の適正なバランスの保持による有害微生物の抑制
    • 病害の原因となる微生物に対して忌避効果のある微生物の利用
  2. タネ・苗の選定による防除対策
    • 適地適作の観点から作付け品目や品種の見直し
    • 抵抗性品種や抵抗性台木(※2)の利用
    • 健全な種苗の利用
    • タネを塩水により比重選別し、重い優良なタネを選ぶ
    • タネの温湯消毒
  3. 栽培管理方法による防除対策
    • 作付け時期の変更による病害虫の回避
    • 香辛植物など、臭いなどで忌避効果のある植物の導入
    • センチュウに対して忌避効果があるマリーゴールドや被覆植物(カバークロップ)など、有害動植物の発生を抑制する植物の導入、またこれらの生育に適した環境の整備など
    • 被覆作物による雑草対策
  4. ほ場周辺の環境管理による防除対策
    • 害虫を食べる野鳥やカエルなどの捕食性天敵や、害虫に寄生して殺すハチ類などの寄生性天敵の利用。またこれらの生育に適した環境の整備など
  5. 物理的資材の活用による防除対策
    • 光線の遮断(紫外線カット)により病害虫の活動を阻害
    • 誘蛾灯、防蛾灯の利用
    • プラスチックテープ等の反射光の利用
    • 爆音など音の利用
    • 電柵など電流の利用
    • 防虫用ネットの利用
    • 粘着トラップ
    • 手取り除草や中耕除草、草刈機利用など人力または機械的な除草方法など
    • 草マルチ、ポリマルチによる雑草対策
    • 地温調節装置による生育促進

このIPMハンドリング(総合的有害動植物防除管理)だけでは防除できない場合、例えば自己責任以外による突発的な事態などにより、ほ場または近接したほ場で有害動植物が発生したり、経験的に発生が確実に予測され、これを放置しておくと農産物に多大な被害が予測される場合のみ、JAS規格で定められた一部の農薬が応急処置的に使用可能となっています。この条件付きで使用可能な農薬は、国際ルールに則った普通農薬と特定防除資材で、より安全性の高い天然系の農薬になっています。

有機JAS規格で指定された農薬の分類別リスト
農薬の主な分類緊急対策指定農薬
殺菌剤無機硫黄剤硫黄くん煙剤
硫黄粉剤
水和硫黄剤
硫黄・大豆レシチン水和剤
石灰硫黄合剤
無機鋼剤鋼水和剤
無機銅剤銅粉剤
無機銅・硫黄剤硫黄銅水和剤
ボルドー剤調整用硫黄銅
生石灰
炭酸水素ナトリウム剤炭酸水素ナトリウム水溶剤
炭酸水素ナトリウム銅水和剤
天然由来物質シイタケ菌糸体抽出物液剤
生物由来の殺菌剤天敵等生物農薬及び生物農薬製剤(BT剤など)
特定防除資材重曹
食酢
殺虫剤天然殺虫剤除虫菊乳剤(除虫菊から抽出)
ピレトリン乳剤(除虫菊から抽出)
なたね油乳剤
大豆レシチン・マシン油乳剤
マシン油エアゾル
マシン油乳剤
脂肪酸グリセリド剤
デンプン水和剤
ケイソウ土粉剤
二酸化炭素くん蒸剤
生物由来の殺虫剤天敵等生物農薬(BT剤など)
天敵天敵等生物農薬
殺虫剤昆虫性フェロモン剤性フェロモン剤
その他の誘引剤メタアルデヒド剤(捕虫器併用)
殺鼠剤液化窒素剤
蒸留抑制剤ワックス水和剤
生物由来の植物生育調整剤シイタケ菌糸体抽出物液剤
その他クロレラ抽出物液剤
混合生薬抽出物液剤
展着剤カゼインを有効成分とするもの
パラフィンを有効成分とするもの

有機栽培ではこれ以外の農薬は一切使用できません。
しかも常に使えるわけではなく、応急処置的にのみ使用可能です。

■注記

※1 中耕(ちゅうこう)
作物の栽培中、固くなった株周辺の土を浅く耕すこと。通気性をよくし、根の発達を促す。同時に除草もできる。

※2 抵抗性台木(ていこうせいだいぎ)
根から病気に感染しないために、その病気に強い(抵抗性のある)品種を台木として、苗を接ぎ木すること。

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2008年06月06日

身近でできる安全・安心有機栽培の基礎知識は、今回から「有害動植物の防除」について3回にわけてお送り致します。



有機栽培では基本的に農薬は使用できません。伝統的な栽培技術を復活させたり、物理的な方法を用いたり、生物の多様性を豊かにしその均衡状態を保つなどして被害を軽減します。
具体的にはどのようなテクニックがあるのでしょうか?今回は農薬の定義から農薬でないものを整理しました。


有機栽培の始まり


有機栽培の歴史は、1962年のレイチェル・カーソンの『沈黙の春』の出版に始まるといわれています。第二次世界大戦後、先進国の目覚しい高度成長に伴い開発された、便利な農薬などの人体や自然への悪影響を啓蒙した書籍です。当時の農薬はある意味で農薬ではなく農毒だったのかもしれません。日本においては有吉佐和子の『複合汚染』が有名です。その後の農薬は、安全性に対する評価が厳格化され、より安全で残留毒性の少ない物が製剤化されて来ています。


農薬の種類


毒性や危険性の観点から順に農薬を整理すると、農薬登録が必要な特定毒物、毒物、劇物、普通物、農薬登録が不要な特定農薬(特定防除資材)の順になります。特定農薬とは平成15年の農薬取締法の改正時に新設された概念で、病気予防に使用する食酢や重曹のように、その原材料から明らかに農作物や人畜、水産動植物に害を及ぼす恐れがないことが明確なもので、防除効果があるものをいいます。驚かれるかもしれませんが、この食酢や重曹も農薬に該当します。


農薬に該当しない有害動植物の防除に使用可能なものは?



  1. 副次的に効果がある肥料に該当するもの
    カリ肥料(つや出し、糖度、品質向上)、ケイ酸カリウム(耐病性などの向上、品質向上)ケイ酸石灰(イネの耐病性などの向上)、ケイ酸マグネシウム(果樹の落果防止や樹勢回復)、硝酸カルシウムや硫酸カルシウム(倒伏軽減、生理障害の防止)、ポリリン酸カルシウム(果樹の着花促進や品質向上)、塩化カルシウム(トマトのカルシウム欠乏により尻腐れ症の防止)、硫酸マグネシウム(マグネシウム欠乏症の防止)、ホウ酸入りカルシウム(生理障害の防止)、EDTA-4Hのカルシウム塩(カルシウム欠乏および果樹の浮き皮防止)などのように肥料に該当するもので、副次的に病害虫への抵抗性を高めたり、成長を促進する効果があるが、農薬的効果と断言するには困難なものが該当します。ただし、有機栽培で使用可能なものは、
    1. 原料が天然物質由来で、
    2. その製造方法が化学合成によって作られていないもの、
    3. また化学合成物質が添加されていないもの
    のみです。
  2. 物理的防除方法に利用する資材
    消毒に利用する水蒸気、熱湯、温風、地中加湿、太陽熱消毒、害虫飛来防止に利用するUVカットフィルム、紫外線反射フィルム、昆虫行動制御灯(黄色蛍光灯)、誘蛾灯、電撃殺虫剤、反射マルチ、電灯、発光ダイオードなどによる照明、紫外線投光器、雑草対策に利用する紙(紙マルチ)(薬剤含浸物を除く)、抗菌マルチ(銀使用)、多目的防災網、防虫網、寒冷紗(薬剤含浸物を除く)、粘着板・粘着シート(薬剤含浸物を除く)、樹幹へのわら巻き(わらに害虫を集め焼却)、爆音器などのように物理的な性質を利用して防除する方法で、薬剤でないものが該当します。
  3. 耕種的防除方法で利用される農法や植物
    害虫の天敵である昆虫である昆虫が好む植物を植えることにより、ほ場の在来天敵を増やし、害虫を低密度に保ったり、ほ場にくず米をまいてスズメを呼び寄せ、ついでに害虫を食べさせたり、また、土壌線虫対策にギニアグラス(イネ科)、クロタラリア(マメ科)、イタリアングラス(イネ科)、エンバク(イネ科)、ソルゴー(イネ科)、マリーゴールド(キク科)、落花生(マメ科)などを、輪作や混植や間作したりするなど、耕種的な防除方法で使用する植物が該当します。
  4. 昆虫類でない捕食動物
    農薬取締法上の天敵類には該当しないアイガモ、アヒル、スズメ、カエル、牛、ヤギ、羊、コイ、フナ、ドジョウ、ホウネンエビなど雑草や害虫を捕食する動物が該当します。


  5. 農薬の定義

    農薬取締法では、樹木及び農林産物を含む農作物などを害する動植物または病害虫の防除に用いられる殺菌剤、殺虫剤その他の薬剤や、農作物などの生理機能の増進または抑制に用いられる生長促進剤、発芽抑制剤やその他の薬剤を農薬と定めています。また、生産者が自分で作る防除資材、植物ホルモン剤、わい化剤、防除のために利用される天敵もすべて農薬に該当します。


    特定防除資材指定の基本的考え方

    1. 薬の定義に該当するもの
    2. 化学合成された物質でないもの(但し食品を除く)
    3. 抗生物質でないもの(弱毒ウィルスを除く)
    4. 有効成分以外の成分として化学合成された、界面活性剤などの補助成分が入っていないもの
    5. 病害虫や雑草に対する防除効果、植物等の生理機能の増進や抑制に対する効果が確認できるもの
    6. 農作物等、人畜や水産動植物への安全性が確認できるもの


    農薬使用基準の遵守

    農薬使用に当たっては農薬使用基準があり、一般家庭園芸ユーザーも含めすべての農薬使用者は農薬使用基準に準拠した使用をしなければならないことになっています(罰則対象)。


    1. 農薬使用者の義務
      1. 農産物等に害を及ぼさないようにすること
      2. 人畜に危険を及ぼさないようにすること
      3. 農産物等に汚染が生じその汚染による農産物等の利用が原因となって人畜に被害が生じないようにすること
      4. 農地等の土壌の汚染が生じその汚染により汚染された農産物等の利用が原因となって人畜に被害が生じないようにすること
      5. 水産動植物の被害が発生しその被害が著しいものとならないようにすること
      6. 公共用水域の水質の汚染が生じその汚染による水の利用が原因となって人畜に被害が生じないようにすること
    2. その為の具体的遵守事項
      1. 規定された適用農作物以外の食用農作物に使用しないこと
      2. 規定された単位面積当たりの使用量を超えて使用しないこと
      3. 規定された希釈倍率の最低限度を下回る(濃い)希釈倍率で使用しないこと
      4. 規定された使用時期以外の時期に散布しないこと
      5. 播種から収穫までの間に規定された使用回数を超えて使用しないこと

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2007年10月18日

身近でできる安全・安心有機栽培の基礎知識・第四回目は、「有機栽培で使用可能な肥料」についてお送り致します。

有機肥料として販売されているものにも有機認証制度では使用できないものがあるのを知っていますか?
今回は有機認証制度下で使用可能な資材について説明します。

有機農作物の原則

有機農産物のJAS規格には、有機農産物の生産の原則が以下のように規定されています。

  • 目的
    農業の自然循環機能の維持増進を図ること
  • そのための方法論1
    「化学的に合成された肥料(※1)や農薬を避けることを基本とする」
  • そのための方法論2
    「土壌の性質に由来する農地の生産性を発揮させる」
  • そのための方法論3
    「農業生産に由来する環境への負担をできる限り低減した栽培管理方法を採用する」

有機栽培でのチッ素分の補給

農業生産活動は、自然界の生物の食物連鎖やチッ素循環によって、昔から自然と共生しながら営まれてきました。植物は自ら有機化合物を合成します。つまり食物連鎖のスタートといえます。それをえさにする昆虫やそれを捕食する小動物、次に肉食動物、これらの死骸を食べる土壌生物や微生物。このような生物の多様性の中で、ある生物のエネルギーがほかの生物に利用され、生物に欠かせない元素が繰り返し利用されている物質循環がベースになっているのです。

 植物の生育に必要なチッ素分を例に考えてみましょう。植物は生育に必要なチッ素分を主に土壌中から吸収します。そのチッ素分は収穫物残渣や土壌微生物、地上動物、大気などの物質循環によってもたらされています。植物が利用したチッ素分の大部分は、収穫物として農地の外に持ち出されます。この状態を放置するとチッ素分の収支が合わなくなるため、チッ素肥料を補給しないと十分な植物の生育が困難となってしまいます。

 ただし有機栽培では化学肥料は使用できませんから、収穫物残渣などを堆肥化して投入したり、輪作体系を考えたり、緑肥やマメ科植物を利用したりして土壌の肥沃化に努めています。しかしこれらの方法だけでは養分供給が不十分な場合があるため、その補助資材として、有機栽培でも使用可能な肥料や土壌改良資材が市販されています。

有機栽培で使用可能な肥料とは

有機栽培で使用可能な肥料や土壌改良資材の考え方は、

  • 使用目的が、肥料目的、土壌改良目的であること
  • 天然物質または天然物質に由来する原料であること
  • 化学的な方法によらずに製造されたものであること
  • 肥料製造において化学的に合成された物資が添加されていないこと

1~4のすべてを満たす肥料や土壌改良資材のみが基本的に使用可能な資材です。
肥料については肥料の公定規格や登録、検査などについて定めた肥料取締法(※2)という法律があります。その中には「有機肥料」の公定規格はありません。近いものには「有機質肥料」や「有機入り配合肥料」の規格があります。

「有機質肥料」には、魚かす、骨粉、乾血・血粉などの動物質肥料、なたね油かす、ダイズ油かすなどの植物質肥料やぼかし肥料その他有機廃棄物肥料がありますが、すべてがすべて有機栽培で可能という訳ではありません。先の④による確認が必要になりますが、おおむね使用可能な物が数多くあります。

注意を要するのは、動物質肥料の蒸製皮革粉(※3)で、原料がタンニンやクロムによってなめし処理されている関係で、使用禁止資材になっています。

 「有機入り配合肥料」とは配合肥料の製造において有機質肥料を一定量以上配合した物をいい、すべてが有機許容原料とは限りません。化学肥料が配合されているものもありますし、先の蒸製皮革粉が原料に使用されていることもあり、配合原料の個々の確認が必要になります。また配合肥料には、まきやすくするために粒状化去れたものが多数ありますが、原料に鉱物類が多くなると化学合成由来の造粒剤が使用されていて使用禁止になっているものもあります。

では有機栽培農家が使用している肥料は?

有機栽培農家が使用している肥料は、たい肥、有機入り配合肥料(有機許容原料100%使用)、ぼかし肥、魚かす、油かす類、米ぬか、炭酸カルシウム肥料、貝化石肥料などが一般的で、植物質由来、動物質由来、鉱物質由来を組み合わせて利用するケースが多くみられます。魚かすなどの動物質有機肥料は微生物分解によりアミノ酸態となり、食味向上に効果を発揮しますが、ほ場の土の上に直接散布したままにしておくと虫が集まりやすくなるため、必ず土壌中にすき込むようにしてください。


■注記

※1 肥料(ひりょう)
植物の栄養に供すること又は植物の栽培に資するため土壌に化学的変化をもたらすことを目的として土壌に施される物、および植物の栄養に供することを目的として植物に施される物

※2 肥料取締法(ひりょうとりしまりほう)
肥料の保証成分不足や異物混入といったごまかしなどの不正流通防止を目的とした法律

※3 蒸製皮革粉(じょうせいひかくふん)
なめし革などの皮くずを蒸熱後乾燥、粉砕したもの

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2007年06月05日

身近でできる安全・安心有機栽培の基礎知識・第三回目は、「タネまき・育苗管理」についてお送り致します。

野菜や花を育てるために大切なことは、栽培時期や病害虫対策などさまざまですが、最初の苗の善し悪しで、その作物の出来が左右されます。
まずは健全で丈夫な苗を育てること、それが成功の第一歩です。

「土作り半作・苗作り半作」聞いたことありますか?

作付け品目と品種を間違わなければ、また、肥沃な土壌に健全で丈夫な苗を植えれば、基本的には、後はおてんとうさま任せで収穫が可能という意味です。これは、いかに「土作り」と「苗作り」が重要かを言い表しています。

「苗作り半作」

作付け計画、導入品種が決まったら、次はタネまきと育苗時の管理方法がとても重要になります。畑に直まきして育苗するのか、育苗箱やセルトレイなどで自家育苗するのか、その土はどうするのか、できあいの苗を購入して植えるのか、その管理方法はどのようにするのかなどを考えなければなりません。
有機JAS認証制度下では、有機栽培に使用するタネや苗は、有機栽培された作物から採取されたタネや苗を使用して有機的に育苗管理するのが原則です。しかしタネが自家採種や交換、購入出来ない場合は、有機栽培されていないタネ(化学肥料や農薬、種子処理など化学合成物質が極力使用されていないもの)を使用することも例外的には可能です。その場合、育苗管理においては有機的に管理する必要があります。有機JAS認定を取得した農家さんは、こんな面でも苦労しているのです。

購入苗選びのポイント

外観は、茎は太く節間が短く、茎葉がガッチリしていて、葉色が明るい深緑色で、生長点のある芯が淡い緑で若々しく、新葉が素直に伸びようとしているものを選びます。植えつけるときはそのまま植えつけずに、根が畑の土に早くなじむように、ポットの下部や側面の土を半分ほど指でかき落とし、根をむき出しにします。古く老化した根はカットしてから植えつけます。
化学肥料が効きすぎたチッ素過剰の苗は、ヒョロヒョロとして茎が徒長(節間が長い)し、葉色が黒緑色で、葉が大きく厚みがありません。また、垂れ下がる傾向があり、軟弱で育てにくいので避けたほうが賢明です。特に、定植する畑が有機栽培を目指し、効きめの遅い有機質肥料を使用する場合はなおさらで、チッ素過剰の苗はなかなか活着せず、生育が遅れる傾向にあります。
根に障害があるものは、双葉が黄化して枯れていたり、葉色が薄く、芯の部分が黄色く元気がない傾向にあります。ポットから抜いて根を見ると、底でとぐろを巻いて褐色になっていることが多く、根が真っ白で、側面には細かな細根や根毛がいっぱい張っている健全な苗の根との違いは一目瞭然です。

よい苗の選び方

自家育苗を行うメリットとは?

導入品種の苗が入手できない場合や、よい苗が見つからない場合は自家育苗する必要があります。初心者にはかなり勉強(育苗日誌をつけておくと次回の参考になりますよ!)が必要ですが、自家育苗のメリットは、管理がしやすいこと、幼苗時の病害虫から守りやすいこと、そろった丈夫な苗を作りやすいこと、よい苗のみが選択可能で収穫時期を早めることができる、などいろいろありますが、何といっても、発芽の段階から一貫して管理する楽しみではないでしょうか?
育苗箱やセルトレイにタネまき用土を利用してタネまきする場合は、肥料は不要です。肥料分を含まないピートモス(乾燥しきってないもの)や赤玉土(小粒)や黒土(粉状)にくん炭などを配合し、水はけ、水もちのよい清潔な用土にしましょう。双葉が開くころまではタネの栄養で育つので肥料はいりませんが、本葉が出始めたら薄めの液肥(有機栽培では魚から作られたアミノ酸液肥などが使用されます)を水やり代わりに2〜3日おきに2〜3回散布し、勢いよく生長し始めたら少し濃いめのものを1週間おきに散布し、鉢上げまたは畑に定植します。発芽時の水やりで特に注意が必要なのは、発芽がそろうまでは用土を絶対に乾かさないことです。タネは水分を吸って休眠から目覚め、根と芽を伸ばしますが、途中で用土が乾燥してしまうと出始めた根や芽も枯れてしまうからです。逆に発芽がそろった後は水やりを控えめにします。日中はやや弱々しくとも慌てて散水する必要はありません。早朝に見て葉露が出ているようであれば水分は足りています。用土が乾燥し葉露が出ない場合に少量多回数で水やりした方が丈夫な根を張らせることができます。

育苗箱を使った自家育苗のポイント

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2007年04月09日

身近でできる安全・安心有機栽培の基礎知識・第二回目は、「作付け計画の考え方」についてお送り致します。

あなたの畑では自分で収穫して食べたい野菜のみ作付けしていませんか?
おいしい野菜を収穫するには、年間を通して、いつ、どの野菜を植えるかという作付け計画をきちんと考える必要があります。

連作障害の原因

畑に同じ作物を作り続けると、作物の生育、収量、品質が低下する連作障害(いや地)が発生します。
その原因は、土壌養分の消耗によってアンバランスになった過剰の養分残留や微量要素の欠乏であったり、作物自身が分泌する有害物質の蓄積であったり、土壌伝染性の病害や線虫(※1)などによるものなど、さまざまな原因があげられます。
その対策として太陽熱や熱水の注入による土壌消毒や、有用微生物が豊富な堆肥や微生物資材を使うことによって、連作障害を回避している事例も見受けられます。

連作障害を防ぐ目安

休む期間連作障害がでやすいといわれている作物
約5〜7年エンドウ、ゴボウ、スイカ、トウガラシ、トマト、ナス、ピーマン、メロン
約3〜4年サトイモ、ソラマメ、大豆、ナガイモ
約2年イチゴ、インゲン、キュウリ、ジャガイモ、ニラ、ハクサイ、レタス
約1年オクラ、キャベツ、コカブ、ネギ、ホウレンソウ

輪作の導入

有機栽培では、連作障害が発生しないように、同じ作物、または同じ科の作物を続けて作付けせず、違う科の作物を作付けする「輪作」という方法をとります。
輪作の計画は、地力の維持増進、土壌の物理性の改善、土壌養分の維持補給、雑草の抑制、土地の効率的活用などの観点からも検討しなければいけません。
一般的な輪作のパターンは、最初に養分要求が強いホウレンソウ、ジャガイモ、キャベツ、トマト、ウリ類、穀類を作付けします。
次にニンジン、カブ、タマネギ、ニンニクなどの根菜類や鱗茎類を作付けします。その後にインゲン、エンドウ、ソラマメなどマメ科を作付けします。
また、良質な有機物が入手できず、地力が弱い場合は、輪作の中に緑肥(※2)としてイタリアングラス、ソルゴー、エンバク、クローバー、レンゲなどの地力増進作物を栽培し、青刈り(※3)すき込みによって畑の腐植(※4)を増加させます。
同じ科の作物の連作は作物につく害虫も共通することが多く、害虫の発生密度が高くなり被害も受けやすくなるため、防虫対策の点でも輪作は有効な手法です。

科ごとの代表的な作物


アカザ科ホウレンソウ
アブラナ科カブ、カリフラワー、キャベツ、コマツナ、ダイコン、チンゲンサイ、ハクサイ、ブロッコリー
イネ科トウモロコシ
ウリ科カボチャ、キュウリ、スイカ、メロン
キク科ゴボウ、シュンギク、レタス
サトイモ科サトイモ
ショウガ科ショウガ
セリ科セロリ、ニンジン、パセリ、ミツバ
タデ科ソバ
アオイ科オクラ
ナス科ジャガイモ、トウガラシ、トマト、ナス、ピーマン
ヒルガオ科サツマイモ
マメ科インゲン、エダマメ、エンドウ
ユリ科タマネギ、ニラ、ニンニク、ネギ、ラッキョウ、ワケギ

同じ科の作物を続けて作らないよう、作りたい作物がどの科に属しているかを知っておくことが重要です。

前作との相性

下の組み合わせは、相性が悪く生産性が低下する傾向があり、注意が必要なものです。

前作その後に作ると相性が悪い作物
エンドウホウレンソウ
キュウリニンジン
サツマイモカブ
ジャガイモエンドウ・ショウガ
セロリ・ナス・ハクサイサツマイモ・ダイコン
ダイコンピーマン
ソバカブ
ナストマト・ジャガイモ・ピーマン(同じナス科)

混植・混作の活用

チッ素供給源であるマメ科植物や、土壌の有害生物の忌避効果のあるニラなどから、2種類以上の作物を一緒に栽培することを混植・混作といいます。家庭菜園では非常に有効な手法です。
ニンジンとエンドウ、ホウレンソウとエンドウ、トウモロコシとカボチャ、メロンとヒマワリなど、組み合わせはさまざまです。その効果として、以下のものがあげられます。

  • 病害虫忌避効果・・・タマネギはイチゴやトマトを、ミントはキャベツを、バジルはトマトを、トマトはキャベツやブロッコリーを虫から守るといわれている。
  • 土壌養分の効率効用・・・浅根性と深根性の作物や、養分要求の強い作物と弱い作物の混作により、養分が効率よく利用できる。
  • 誘引効果・・・草丈の高い作物と低い作物、おとり作物によって虫を誘い集める。
  • 天敵定着効果(※5)・・・多種多品目の栽培によって益虫が生息しやすい環境になる。

作付け計画の考え方

以上のような作物のさまざまな組み合わせや時期的なことを踏まえ、畑内のローテーションを検討します。
それとともに忘れてはならないのは、その畑の気候、風土、土質、水質などの環境に適した作物や品種を選定することです。
有機栽培への転換を始めるときによく行われるのは、多品種・多品目の栽培から、その畑や環境に適した品種を絞り込んで行くことです。皆さんは、無理のある品種選びをしていませんか?


■注記

※1 線虫(せんちゅう)
線虫綱の袋形動物の総称。体は細長く、断面は円形。体表は平滑で厚い角皮で覆われる。多くは動植物に寄生し、回虫・鉤虫(こうちゅう)・住血糸状虫など人畜に害を与えるものも多い。円虫類。ネマトーダ

※2 緑肥(りょくひ)
マメ科作物(根粒菌を増やす)や、イネ科などの根が深い作物(土の中の通気性や水はけをよくする)などの葉や茎を生のまま切り刻むなどして田畑にすき込むこと

※3 青狩り(あおがり)
飼料または肥料にするために、葉がまだ青く実が熟さないうちに刈り取ること

※4 腐植(ふしょく)
土壌中の動植物の遺体が微生物の働きで分解された有機物。一般には土壌中の有機物の総称

※5 天敵定着効果(てんてきていちゃくこうか)
くも、かまきり、とかげ、てんとう虫など、植物を食害する害虫を食べてくれる益虫(えきちゅう)が生息しやすい環境になること

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2006年12月13日

第1章 有機栽培の土づくり


有機栽培、農薬不使用栽培、化学肥料不使用を行って失敗した経験はありませんか?
自分で食べる自家菜園の野菜は、より安全でおいしいものを収穫したいですね。
このシリーズでは、失敗しない有機栽培のための基礎知識を連載します。ぜひ参考にしてください。

なぜ化学肥料を使用しないのか?

有機栽培では化学肥料は使用できません。化学肥料は作物の生産効率を大いに改善しましたが、その依存と多用によって地力を弱め、地下水汚染や河川の富栄養化を招き、自然生態系に悪影響を与えてしまいました。
また、化学肥料に依存した栽培では、作物自身が根を深く細かく張る必要がなく、植物本来の生命力に満ちた状態ではないため、作物の栄養価が薄らぐといわれています。また、作物に残留する過剰の硝酸態チッ素(※1)は人の細胞を酸化させ、病気になりやすくなるという説もあります。
化学肥料が使用できない有機栽培では、地力を高める土づくりが必要になります。

肥よくな土とは?

例えばマサ土(※2)などは、やせた土です。やせた土とは、陽イオン交換容量(CEC)(※3)が小さい土のことで、植物の栄養分のうち陽イオンであるアンモニウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどを保持する力が弱いため、これらがすぐに流亡(※4)してしまいます。
また、構造的にも単粒構造で、水はけも水もちも悪いため、バーミキュライトやゼオライトなどの土壌改良資材を使用くする方法が必要になります。さらに堆肥を投入することによって、単粒構造の土壌が堆肥中の腐植(※5)やミミズなど土壌動物の排せつ物などとくっつき合って、団粒構造が形成されていきます。
団粒構造が発達した土は柔らかく、水はけ、水もち、通気性がよく、根が発達しやすい土になります。意外かもしれませんが、根には酸素が必要で、酸素濃度が土壌の10%前後では生育の遅れが発生し、5%以下では生育が止まってしまいます。水はけの悪い土は根が酸素不足になり根腐れを起こしてしまいます。
また、土壌中の腐植が増えると、陽イオンだけでなく硝酸態チッ素などの陰イオンも保持できるようになり、リン酸分の植物への吸収もよくなるなど、肥料もちや肥料効率が高くなります。

土づくりのための堆肥とは?

ここまで読んで、「なーんだ。お決まりの堆肥を利用しましょうという話か」と思っていませんか?先述のような理想の土にするには、そんなに簡単なものではありません。
本来、堆肥と厩肥は別々の物でしたが、現在では厩肥=堆肥が一般的になってしまっています。皆さんは堆肥をどのように理解していましたか?ここでは堆肥と厩肥を区別して、その違いをお話します。
有機栽培で求められる本来の堆肥とは、ワラなどの枯れた植物体を微生物の働きで発酵分解させたもので、その主成分は腐植です。肥料成分は低く、主な役割は土の団粒構造を促進することです、雑木林の落葉の下の土に近い、腐葉土をより分解させた状態の物をイメージしてください。このような土にはモグラ、ミミズ、トビムシ、ダニなどの土壌動物が生息し、土壌微生物とともに有機物分解の一翼を担ってくれています。
特にミミズは、落ち葉などを食べて堆肥化し、そのふんは濃縮化された栄養分に富み、団粒構造も促進してくれます。また、ミミズが掘った穴は通気性や水はけを高める効果もあり、このミミズが活動できる堆肥が土づくりに必要な堆肥なのです。
家庭でできる身近な堆肥は、生ごみ(水分をよく切り、塩分を除きます)や落葉などに、微生物のエサとなる米ぬかなどを入れ、近くの竹林や雑木林の落葉の下の土を入手するか、発酵促進用の元菌を購入して混合し、バケツかコンポスター(堆肥製造器)を利用して作ることができます。また、ミミズを投入して分解させる方法も有効です。

厩肥利用の注意点?

一方、厩肥とは家畜や家禽(※6)の排せつ物を敷料(※7)とともに発酵分解させたもので、肥料分の補給が主な目的になります。その成分は、原料や発酵分解の程度により大きく異なります。有機栽培スタート時には地力が弱いため、従来の収穫量を確保しようとすると、肥料分の高い厩肥に頼りがちになりますが、安易な厩肥の利用は土をだめにしてしまいます。
厩肥にも長時間発酵分解されて堆肥同様の効果があるものもありますが、一般的には発酵が不十分で、乾燥させただけのものが多く見受けられます。発酵不十分な厩肥を使用してすぐにタネまきや定植をすると、分解途中のチッ素分が土壌中でガス化して植物に生育障害を起こします。また、病害虫を引き寄せたり、厩肥の中に生きた雑草のタネや害虫の卵などが残っていて繁殖することもあります。
厩肥を原料から区別すると、鶏ふん、豚ふん、牛ふんの順で肥料分が高く、堆肥同様の腐植としての効果の点から見ると、その逆になります。特に鶏ふんを利用する場合には、発酵分解が十分されているかどうか注意が必要です。よい厩肥の見分け方は、アンモニア臭がきつくないもの、水分を与えても腐敗臭がなく、白い菌糸が発生するものなどです。

その他の養分補給の方法は?

厩肥以外の養分補給の代表的なものに油かすや魚かすなどの有機質肥料がありますが、化学肥料をただ単純に置き換えた使用のしかたでは、化学肥料を多用した場合の諸問題を解決することはできません。有機質肥料は肥料の効きが遅いため、どうしても多めの使用になりがちです。
その点、肥料の効きが比較的早いのが、油かすや魚かすなどを発酵処理した「ぼかし肥料」で、多用しなくても十分に効果が得られます。

地力チッ素とは?

チッ素は作物の生長に欠かせない栄養分です。作物が根から吸収利用できるのはアンモニア態や硝酸態と呼ばれる形態のチッ素ですが、有機栽培に重要なチッ素はそれだけではありません。安定した作物生産を行うためには、地力チッ素も高める必要があります。
地力チッ素とは、動植物や微生物の死骸が分解されたもので、タンパク質やアミノ酸などからなり、化学肥料のように流亡せず土壌に蓄積されます。地力チッ素は堆肥や良質の厩肥、ぼかし肥料からもたらされます。
また、チッ素固定菌(※8)の活発な世代交代によっても、大気中のチッ素が土壌に取り込まれ、地力チッ素が高まります。

地力を高めるには?

  1. 深耕(※9)、天地返し、必要があれば客土(※10)によって土壌の水はけを改善します。大規模な畑では明渠(※11)暗渠(※12)といった土地改良方法を用います。
  2. 輪作体系にマメ科作物(根粒菌を殖やす)や、イネ科などの根が深い作物(土の中の通気性や水はけをよくする)を導入し、緑肥(※13)としてすき込みます。
  3. 堆肥や腐植効果の高い厩肥を投入することにより、土壌の団粒構造を促進させます。
  4. チッ素だけではなくリン酸、カリ、その他の微量要素も考慮し、さまざまな有機物を発酵堆肥化させた「ぼかし肥料」を利用しながら地力を高めます。

※1 硝酸態チッ素(しょうさんたいちっそ)
植物が吸収利用できる状態のチッ素の一形態。植物はいったん硝酸態チッ素を吸収してから、アミノ酸やタンパク質などを合成する。チッ素は重要な肥料成分だが、過剰になると植物自身にも害をもたらす。

※2 マサ土(まさつち)
花崗岩が風化してできた土壌の一種

※3 陽イオン交換容量(よういおんこうかんようりょう)
土壌が肥料を保つ力を表す指標。植物に必要な栄養分の多くは土壌水分中で陽イオンとして存在する。土壌が陽イオンを結びつける力を化学的に測定した数値が陽イオン交換容量。

※4 流亡(りゅうぼう)
雨や水やりによって、土壌中の肥料分が流れて失われること。

※5 腐植(ふしょく)
土壌中の動植物の死骸が微生物の働きで分解された有機物。一般には土壌中の有機物の総称。

※6 家禽(かきん)
家畜同様に飼育される鳥。

※7 敷料(しきりょう)
家畜の寝床に使われるわらなどの資材

※8 チッ素固定菌(ちっそこていきん)
空気中のチッ素を体内に取り込むことができる微生物の仲間。マメ科植物の根と共生している根粒菌が有名。

※9 深耕(しんこう)
土を特に深く耕すこと。

※10 客土(きゃくど)
土壌を改良するために、他の土地から良質や土を運び入れること。

※11 明渠(めいきょ)
畑などの排水を高めるための、ふたのない溝。

※12 暗渠(あんきょ)
覆いをしたり地下に設けたりして、外から見えないようになっている水路。

※13 緑肥(りょくひ)
植物の葉や茎を生のまま切り刻むなどして田畑にすき込むこと。


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